社会的制裁、って言葉があります。例えば犯罪を犯した人が解雇処分を受けたり、その他いろいろと不利益を受けること。
制裁の主体は不明*1だし、だいたいデュープロセスなんてモノはないし、そんなものの存在を想定していいのか?って疑問もありますが、だからといって制裁成立を否定するわけにもいかず、法的にもかなり困ったちゃんな話なんじゃないかな……と思ってます。
そんな今日、津田さんのメールマガジンで流れた文章。ちょっと長いですが引用します。以下引用は津田大介「メディアの現場」Vol. 178より。*2
●こちらが到着する直前に、辺野古移設に賛成するオスプレイファンクラブ( http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/news/130724-osprey.html )が嫌がらせをしに来ていたそうだ。彼らの嫌がらせはまさに「写真」を撮影すること。ゲート前に車を停めてニコニコ笑いながら写真を撮影し、ゲートの中に入っても(上の記事であるように、米軍と交流をしている)中からゲートに向かって撮影し、その写真をブログなどに掲載する。
●彼らがやっているのは撮影してネットで拡散するだけではなく、ゲート前に参加している人のフルネームを割り出し、自宅や職場、それらの電話番号などを調べて、イタズラ電話や、職場に誹謗中傷の怪文書などを送るそうだ。
●そういう連中が来たばかりの直後にのこのこ見慣れない人間たちが来たから向こうも「また来たのか!」と熱くなったということだった。そりゃ、そういうことがあったら熱くもなるよね。しょうがない。
●国会前で活動しているSEALDsメンバーにも、フルネームや大学名晒していろいろな嫌がらせが絶えない。
●こういう「リアル」な社会にじわじわとダメージを与える卑怯な手法が共通しているのはなんなんだろうね(しかもそういうことやるのは全員顔も名前も出さない匿名だ)。
●ネット時代だからこそ生まれる、そういう新しい「人権侵害」に対抗するためには何ができるのか。多分自分にとってもそれは今後10年くらい考えるテーマになるだろう。いろいろ考えて、今回のゲート前の写真は結局ツイッターにはアップしなかった。今度ゲート前訪れたときにどうするかはまだ決めてない。
そして、最近の深澤弁護士のツイート。*3
こういう手法で相手に対する社会的制裁が成立するかというと、実際の所「制裁に乗った」時点である意味駄目なんですよね。たとえばこの手の怪文書を根拠に解雇処分下したら、解雇無効判決はさすがに免れないのでは。
とはいえ、一方で相手がフリーランスだったりすると普通に効果出てしまうこともあります。雇う側にとってリスクは少しでも減らしたいのは当たり前で、「こういう連中にロックオンされている人を雇う」こと自体がリスク。*4
で、黒子のバスケ事件を思い出してみましょう。あの事件では、脅迫状が「イベント会場周辺の店舗」にばらまかれました。そして、最初の脅迫のあたりで実際に硫化水素ガスを散布する事件もありました。*5イベント会場や主催者はイベントを開催することで利益を得ますが、その周辺の人たちって業種によってはイベント開催によって利益を得ることなく、リスクだけを背負う結果になるんですよね。そりゃイベント中止を求めるのは当たり前ってものです。
まさに津田さんの言う通りで、何ができるのか?と考える程度の話題なんですよね。それ以上の行動力のあるアクションを起こしにくい。
犯罪予告やその他業務妨害ではなく、むしろ業務改善のための提案ですらある。でも実際は改善提案の重みと使ってる武器があまりにミスマッチすぎる。
まずは、社会の一人一人がこういう「人権侵害」に乗らない、そういう立ち位置を明確にするしかないのかもしれません。
(以下2015/09/01追記)
よく考えたら、こういう怪文書とか攻撃って、ぶっちゃけ単なる名誉毀損なんですよね。相手が公職選挙にでも出てない限り、公益性の証明は難しいはず。「彼は周囲に被害をもたらす犯罪者なので社会から追放しましょう!」はアウトです。
なわけで、結局警察機能の強化が重要なのかな、と思い直してみました。
日本の警察には「民事不介入」という不文律がありますが*6、そもそも民事不介入の考え方自体がおかしいわけです。
被害者に落ち度があろうが、それは被害を受けるリスクを高めるかもしれないけれど、故意に行われた加害者の責任は決して軽減されない。*7なので、違法行為があったら警察はきちんと動いて摘発すべきものは摘発する、そのスタンスを明確にすべきなのでしょう。
道路交通法で明らかな通り、摘発される可能性がきわめて低い法は誰も本気では守りません。普通の空いてる道で制限速度を守って走っている車がどれだけいますか?そういうことです。誹謗中傷が取り締まられないのなら、誰だって名誉毀損や偽計業務妨害をNGとは思わない結果になります。