今週、ちょっとした騒ぎになっていた裏書展問題。
(1) 技術書典 という技術系即売会がありました。元々人気が高く。これまでも落選サークルを出していたようなのですが、今回会場に比べて応募が多すぎて、かなりの量の落選サークルを出してしまいました。
— あかみ@音屋&写真垢 (@har_chromatique) 2018年2月6日
(2) 技術書典に落選したサークルが集まって、「裏書典」というイベントの提案が出ました。技術書典を補完しつつ、技術書典に落選したサークルにとっての発表・頒布の場を確保しようという試み。
— あかみ@音屋&写真垢 (@har_chromatique) 2018年2月6日
(3) この名前や文脈について、一定の批判が出ました。特に文学フリマの代表・望月さんが激烈な批判派に回っていて、そのあたりは先ほど私が望月さんのツイートを引用してツイートした通りです。
— あかみ@音屋&写真垢 (@har_chromatique) 2018年2月6日
裏書展、かくして吹っ飛んでしまいました。
文フリの望月さんは謝罪をされたようで、その謝罪を外から「謝罪として成立していない!」とか叩くことには何の意味もないですから、謝罪をされたことは良いことと認めて評価します。
ただ、責任を十分に果たしたとは私は考えていません。
言葉のお詫びだけで即売会を潰した責任が取れるというなら、それは甘いですね。
外部の即売会の若い芽を潰しつつ、百都市構想で即売会の育成を続ける、という矛盾について明快な行動方針の表明を望みます。
貴方が望む即売会「だけを」育成したいのですか?#文学フリマ https://t.co/6NUTqIz7Fq— あかみ@音屋&写真垢 (@har_chromatique) 2018年2月6日
あと、文学フリマとして何らかの落とし前はつけてほしいところです。
単に謝罪するだけでは、潰れたイベントは戻らないです。文学フリマ百都市構想と、今回小さなイベントを文学フリマ代表が潰した事実の間では、整合は取れません。その十字架をどのように彼らは引き受けるのか。
— あかみ@音屋&写真垢 (@har_chromatique) 2018年2月6日
……というのは置いておいて、批判とアドバイスの話。
私も即売会主催経験のある人間ですし、初回の主催のときには多くの方のコンセプト提示に本当にお世話になりました。なので、社会への貢献として他の新人の即売会にアドバイスを出すことは惜しまないつもりです。
今回の騒ぎを通じて、何が良いアドバイスなのか、批判とは違うのか、を考えてみましょう。
アドバイスは誰のため?批判は誰のため?
まずはこれです。アドバイスは、即ち対象を改善するためにあるものです。第一義的には相手の即売会のためにあります。
一方、批判は即売会を社会的に正しく位置づけ、問題があればその問題を社会に向かって指摘するためにあります。第一義的には社会のためにあります。
批判を禁じるというつもりはありません。正当かつ健全な批判は民主主義、そして自由な思想表現の根幹、一丁目です。批判が出ることはむしろ良いことです。
ですが、批判は相手の即売会を良くすることに繋がるとしても、良くするためにあるものではありません。場合によっては批判を通じて相手の即売会を潰すことが社会的に良い結果に繋がる、という事例もあり得るでしょう。
アドバイスは徹頭徹尾相手の即売会の改善のためにある、と考えれば、まずはここが批判とアドバイスの最大の違いになります。
筋の通った問題提起を
今回、文フリの望月さんからは個人情報の取り扱いについての疑義が呈されていました。曰く、技術書典から裏書典へ個人情報を「与えて」ほしくない、と。
その疑義は本当に筋が通っていたのでしょうか?私はそうは思いません。
個人情報をそういう形でやりとりすることは反社会的だ、ということは多くの人が理解していると思います。当然技術書典は分かっているでしょうし、裏書典がそのことを理解していない、という主張は不自然です。
不自然な主張をするには、何らかの証拠(直接でも状況でも推論でも)が必要です。望月さんは主張を何らかの証拠で裏付けているでしょうか?もしくは推論、憶測でもかまいません。何かしらの憶測がついていたでしょうか?いいえ、ついていませんでした。
異常な主張に根拠もつけないというのは、私は単なる言いがかりだと思います。
言いがかりに対してもきちんと対応する必要がある、という「民主的」なアプローチもあり得ないとは言いませんが、個人的見解を言わせていただくと、その類のアプローチは議論のリソースの浪費にすぎないと考えます。
問題提起の裏には、解決策がある
何かの問題が提起されたということは、(筋が通っていさえすれば)解決すべき点が提示されたということです。即ち、解決すれば改善に繋がると考えられます。
本来、即売会の存続が良い状況ならば、あるべき批判はそのような形です。批判を通して社会を改良することも当然できます。他の即売会が評論の横展開を受けて、問題を未然に防ぐこともできるでしょう。
即売会を批評で潰す、ということ
あまりに酷い問題が発生している場合は、即売会そのものを叩き潰すような批判が必要かもしれません。今回の裏書典問題はそのような事案だとは考えませんが、思考実験としては「成立してはならない」類の即売会を考えること自体は可能でしょう。
本当に即売会を潰さなければならない場合、公然とやるのは危険なように思います。必然的にとても強い表現を使わざるを得ないわけで、公然とやるよりは裏で直接即売会の運営中止を説得するほうがトータルで健全なアプローチになるような気がします。
なお、サークルが集まっている状況下であれば、よほどの深刻さでなければ即売会を強引に開催しきることを優先したほうが良いでしょう。そのためにはチーム丸ごと乗っ取るアプローチが必要なこともあり得るのですが、外形的には浦賀船渠事件とあまり見た目が変わらないです。
最後は倫理に裏打ちされた決断と後世の評価だけが判断基準になりそうだ、という気がしなくもないです。
文フリは何を考えるべきか
元々文フリのボイコットを呼びかける記事を執筆予定していたのですが、望月さんが謝罪されたことを受けて、執筆は中止しました。
ですが、現状で望月さんが責任を取ったと言えるかどうかは不明です。
今回の問題は(個人情報の取り扱いを中心に)組織全体の問題も指摘されてはいますが、基本としては望月さん一人の不適任さが露わになった事案と考えます。
望月さんの文フリ辞任、もしくは百都市構想について別の担当者に統括を委ねることは、今回の問題について良い責任の取り方になるでしょう。
もしくは以前から私がツイートしていた通り、(日程こそ文フリ合わせにはなると思いますが)裏書典を文フリにあわせてTRC会議室で開催引き受けることもアリでしょう。
今回の事案は、東京圏で800SP、地方都市も含めたらかなり巨大な即売会開催グループのトップが大暴走を起こした事案です。平時から負っている社会的責任も重大ですし、何かしらの明確な形でおとしまえをつけるべきと考えます。特に今回の発言は百都市構想との間では致命的に整合が取れていません。
百都市構想に共感している地方開催文フリが東京文フリ/望月さんの枠から外れることは、今回の望月さんの発言に対する良い抗議行動になるでしょう。今回の発言は小規模イベントに対する文学フリマによる弾圧行為とも考えられ、何度も言いますが百都市構想とは致命的に矛盾します。