私が以前から支持している東浩紀さんが語るセキュリティの概念。
基本は「情報自由論」にありますが、その中で語られる重要なメッセージの一つが「監視なくして自由なし」です。例えば第4章など。*1それを良いものと思うか思わないかにかかわらず、「監視なくして自由なし」の方向性は今後も強く進んでいくでしょう。私たちはそういう社会においてどのように良く生きるか、考えなければなりません。*2
いくつかの話題で気になったので、「監視なくして自由なし」と社会の関係性の話を考えてみます。
まずはヒューマンライツナウのU18出演AV問題。本当にそんなものがあれば児童ポルノでトンデモナイことになりますが……で、このツイート。
HRN報告書の53ページ「照合・確認した出演者の氏名、年齢、住所がわかる ID を保管し、流通・販売・配信 等関連業者に交付し、警察等の照会にいつでも対応できる体制を確立すること」て、ほんとに出演者の立場に立って考えてないよ。ひどい https://t.co/9P0biETxcO
— 要友紀子 (@kanameyukiko) 2016年9月8日
とはいえ、「そこにU18な人が出ていないことを証明できないAVは、社会において存在を認められるのか?」と考えると、これは「監視なくして自由なし」の典型的パターンです。
近年のコンピュータセキュリティで語られるようになってきた「3つのディフェンスライン」の概念も、似たような話です。「監視されている」ことでセキュリティが初めて認められる、という仕掛け。
というわけで、前者の話を「監視なくして自由なし」にどう対応するか考えてみましょう。
まずは、やはり管理するのは業界団体の仕事でしょう。写真なし身分証明書で出演者の身元確認をした結果、出演希望者本人が姉の身分証を持ち出して、結果U20出演のAVが生成されたという事例はあるようで、その手の問題が起きない仕掛けは絶対に必要です。社会的には写真つき身分証明書による身分証明があれば一応通ることになっているので、そのプロセスを明示して監査可能にしなければなりません。
では、誰が監査するのが妥当でしょうか?警察が直接監査するようでは、それこそ警察にプライバシーを丸裸に渡すことになります。現実問題としてそういう社会的枠組みが「監視なくして自由なし」の一環として必要なのかも?と思うことはありますが、じゃあ日本の警察がそのレベルで思想的な話含めて信頼できるかといえば、決してそうではない。なので、監査する元は警察ではない何かでなければなりません。おそらく、業界でお金を出し合って作った監査団体が監査するのがひとつの対策として機能するでしょう。内輪の組織である以上外部第三者監査とは言いがたいものですが、逆に内輪の組織である以上業界の事情が分かるので、完全な外部が直接監査するのに比べて一定のメリットはあります。
次に、この監査団体は誰から監査されるべきでしょうか?これこそ外部第三者団体でなければなりません。典型的には会計法人とか弁護士法人とか、その他十分な社会的信頼を得ていて、信頼を破壊すると自分の業務も破壊されることが分かっているような性質の士業によって構成される団体が望ましいでしょう。
このあたりの話を敷衍して、同人サークルの運営が監査されるべきか?という議論もあります。また別に考えてみたいものではあります。