同人作品の適切な価格設定の話、個人的な検討メモをばらまいておきます。
○前提として、作品の価格を0円(=無料配布)にしたら売り上げは正確にゼロ。無限大円(=誰も買えない)にしたら誰も買わないのでこれまた売り上げはゼロ。一方、通常の同人活動を行えば何らかの正の売り上げが出るのは当たり前なので、どこかに最大の売り上げをもたらす価格が存在することは間違いない。*1
○そもそも「適切な価格」は何で決まるのか?→おそらく以下の3(4)つで決まる。
(0): 本人がつける価格
(1): 作品を制作するのにかかるコストの回収
(2): 需要と供給の関係から決まる、最大の収益を得られる価格。ミクロ経済学的に単純な需要供給モデルのほか、おそらく以下の2つが関係する。
(2-1): 他作品や無消費(=何も買わない)との競争関係
(2-2): 作品のブランディングによって得られた市場での立ち位置
○以上の手法で得た「適切な価格」が常に一致するとは限らない。それぞれの「適切な価格」はどのような関係性に立つか?
○ある手法を「正しい」と言い張ることは、おそらくイデオロギーの表明にすぎない。その程度に「適切性」はお互い相対的なもの。
○一方で、通常は過度な赤字をかかえてしまうとサークルにとって同人活動の継続性が成り立たなくなる。「同人創作は赤字が当たり前」という題目はあるが、その題目でこの赤字を「受け入れて活動を継続しろ」とサークルに命令できるほど、私は上から目線に立ちたくはない。
○そもそも議論の前提として、同人活動でメシを食う人、同人活動をメシのためのプロモーション手段にしている人、同人活動を完全に趣味の枠組みでやっている人を混ぜるのは危険だと思うところ。1番目と3番目はしばしば理解されるが、音系同人に関しては2番目が重要。
○同人の仕組み全体を維持するためには、サークルが過度の赤字を抱え込むことを前提にするのはよろしくないと考える。サークルにとって耐えきれる赤字の範囲で済ませたい。
○赤字を減らすには、売り上げを増やすか支出を減らすしかない。
○売り上げを増やすには価格設定を上げれば良いのか?ミクロ経済学的には価格を上げると売り上げ本数が減ることになっているが、実際どうなのだろうか?意外とそうでもない、という実例を耳にしている。
○支出を減らすための典型例が、謝礼価格のデフレ。この手段は「機能可能」な可能性がある。ただし、同人活動でメシを食う人と趣味の枠組みでやっている人の間での断絶を引き起こしかねない構図ではある。……ここは混ざっているほうが有害で、むしろ断絶しちまってよくね?が本音。
○同時に、同人外部から買い手を引っ張ってくるアプローチが必要。何ができるかな?小劇場演劇とかが苦しんでいる世界。最近のM3には小劇場界隈の人も多くて、そのへんの話を聞けるかもしれない。……ただ、そもそも小劇場演劇世界にとって「M3に進出」が「外部の人を呼ぶための成功例」と見なされている予感がしなくもなくてうぼぁ。
*1:数学的には半連続関数における最大値の定理の話。