こんなエントリが目にとまりました。
で。わざわざエントリにするってことは、まあいろいろありまして。
前提
日本のブログサービス(当然fc2は除外)で、日本人が日本人向けのコンテンツを日本語で記述する事例を前提とします。
海外が絡むと法の適用範囲がめんどくさいので。
引用用件
文化庁の主張する*1「引用」の成立要件は以下の通り。
○既に公表されている著作物であること
○「公正な慣行」に合致すること
○報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
○引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること*2
○カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
○引用を行う「必然性」があること
○「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
表紙の著作権
なぜ問題なしと言い切れます?
表紙の掲載は「正当な範囲内」と言えますか?表紙を引用しなければ成立しないエントリならともかく、書籍の紹介に表紙の引用は必要ですか?必要ないですよね?
ちょっと古めのエントリですが
ARTIFACT ―人工事実― : 画像引用はどこまで認められているのか?
こちらを参考として提示しておきます。
ただ、ここは有名な抜け穴があります。Amazonのアフィリエイト経由で貼るとAmazonの規約の合わせ技で、「出版社はAmazonに使用を許諾」「Amazonはブログに使用を許諾」が組み合わさってOKになります。
[メモ] Amazonの画像を利用する件について考えてみた | tama’s memo
内容の著作権
むしろ、音楽ライターの場合はこちらは問題が小さいように思えます。
現代の楽譜でも、引用成立で「写真貼っても何の問題もない」という話になりませんかね?上記に掲げた条件さえ満たせば引用になります。現代のピアノ楽譜であっても、引用には何の問題もありません。自由に引用できます。
エントリの雰囲気を作るだけの写真掲載なら引用成立は疑わしいところがありますが、ちゃんとエントリと関連する写真なら引用で行けるでしょう。
で、ついでに楽曲自体は著作権が消えた作品について。日本の法では版面権は保護されないので*3、楽譜のコピーは実は問題ない、という話になります。*4楽譜の写真を使うくらい、出版社のビジネスを阻害しない規模であれば何の問題もないのでは。
歴史的にはJASRACが音楽に関しては「引用は成立しない」とか言い張ってた時代もあったようですし、最近でも引用が成立しうる領域に対してJASRACがいちゃもんをつけている事例が報告されていました。*5ですが、法の原文には音楽の引用が成立しない、という趣旨は一切記載されていません。運用はともかく、法は法です。
まとめ
書籍の表紙の写真をアップするのって実は危ないよ!Amazonアフィリエイトが便利だよ!*6
本文の写真なら引用で救えるケースが多そうだよ!
*1:著作権関係は文化庁の解釈=有権解釈が裁判所で一刀両断食らうこともあるので、文化庁の主張は事実や有効な解釈の表明ではなくあくまで主張、つまり文化庁のポジショントークと捉えるべきです
*2:ただし、この条件は裁判では絶対的とは見なされておらず、本件が明確でなくても引用が成立しうるとする判決も出ています
*3:TPP関係でちょっとキナ臭いですが、現状はOK
*4:楽譜ビジネスや音楽のエコシステムを保護するという意味ではまた別問題で、演奏可能なレベルでの本格的な楽譜コピーやPDFばらまきに関しては確かに問題全否定はできません
*5:おそらくJASRACは意図的にやっているでしょう。引用の成立条件の理解や、あてはめのプロセスへの認識が甘い人には引用もしてほしくない、という立場かと。
*6:blogの無料アカウントだとAmazonのURL貼ると自動でブログサービスのアフィリエイトIDがつくところが多いはず。