元祖ライブバー 新宿のロシナンテ さんが、こんな問いを発していました。
めんどくさい、というか地雷がけっこう埋もれている話なんでtwitterではなくblogでやってみます。
ちなみに「Classical」の直訳に「一流の」を割りあてるのは単に話を面倒にするだけで、「古典の」って考えたほうがいいと思います。語源は例えばこちら参照。
といいつつ。
「何がクラシック音楽であり、何がそうでないか」をTrue / Falseで判定する基準は、存在しません。まずはこの事実を受け入れます。
一見クラシック音楽の枠組みに乗っかりそうな曲でも、たとえばこんな限界事例があります。これってほんとにクラシックなんでしょうか?
で、現場レベルで言うと、こういう「音楽史的にはクラシックの枠組みに乗っかってるように見えるけど、サウンドはどう聴いてもなにかおかしいよね?」といった曲をクラシック音楽から排除したがるのは、「あんまり優秀とは言えない先生や権威」です。
現場的には「クラシックの演奏者は、五線の楽譜に書かれてればとりあえず何とかできる」ものです。それだけでいいんじゃないかなー、と。
この曲なんかサウンドも(そして作曲者本人のキャリアも)ジャズなんですが、ジャズメンには難しすぎてクラシックの技巧系ピアニストじゃないと手に負えないって事態が起きてます。
で、歴史的に考えると。
YouTubeの1曲目、この時代は権威に裏付けられた(現代に繋がる)「クラシック音楽」の枠組み自体が怪しい曲です。現代との間をつないでいるのはキリスト教の歴史で、ぶっちゃけてしまえばキリスト教作品でなければ現代から見てクラシックの枠組みに入れられていないかもしれません。*1
現代われわれが読み書きする五線の形が明確になったのは16世紀~17世紀あたりで時代的にはルネッサンスからバロックにかけてです、この時代をクラシック音楽の幕開けと考えるのがわかりやすいんじゃないかなー、と思いますね。
実のところ、クラシック音楽の「定義」は歴史の繋がりに乗っかっているか?で考えてみるといいかもしれません。
モーツァルトの仕事は、大バッハ末期の仕事から繋がっています。そしてベートーヴェンが生まれ、ベートーヴェン末期の仕事がブラームスやブルックナーを生み、そしてマーラーを生み、シュトラウスやシェーンベルクからウェーベルン、シュトックハウゼンやブーレーズと繋がっていく歴史。それこそがクラシック音楽をクラシックたらしめている構成要素です。
ポピュラー音楽とクラシック音楽の繋がりも、一筋縄ではいかない話が色々とあります。
ソ連の大作曲家は多くが映画音楽を手がけていますし、ハリウッドのサウンドを作ったのはコルンゴルト、あのマーラーに神童扱いされた偉大なクラシックの作曲家です。日本の歌謡曲には武満徹の影響がかなり残されているらしいとも言われてます。クラシック音楽がヨーロッパから出て行くにつれて各地域の民族性が結びついたプロセスも無視できません。
まあ、そういうことなので、結論としては「ぶっちゃけどうでもいいんじゃねー?」でいいと思いますよ。
*1:この曲に関してはスペインの作品なんで、アラブ系の影響も強いです。時代的にはレコンキスタ直後くらいかな?